水は犬の健康を左右する重要な要素
犬の体の大半は水で構成されており、水分は体温調整や老廃物の排出、臓器機能の維持など、生命活動の基本を支えています。そのため、日常的にどんな水を飲ませるかは、食事と同じくらい重要です。
しかし、多くの飼い主は「犬に水道水を飲ませても大丈夫?」「危険な水って何?」という疑問を感じています。普段何気なく与えている水の種類や管理方法によっては、愛犬の体に負担がかかる可能性もあり、正しい知識を持つことが欠かせません。
犬に水道水を与えても大丈夫なのか
日本の水道水は基本的に安全性が高い
日本の水道水は厳しい基準で管理されており、細菌や寄生虫の混入、化学物質の過剰摂取のリスクはほとんどありません。多くの動物病院も「日本の水道水は犬が飲んでも問題ない」としています。塩素消毒が徹底されているため、細菌による胃腸トラブルは起こりにくく、飼い主が神経質になりすぎる必要はありません。
ただし塩素のにおいが苦手な犬もいる
水道水に含まれる微量の塩素は安全性の確保に必要ですが、このにおいを嫌がる犬は少なくありません。飲み水の量が落ちる場合は、冷蔵庫で冷やしてにおいを飛ばす、浄水器を使うなどで改善することがあります。ただし、浄水器を使用する場合はフィルターの管理が不十分だと逆に細菌が増えることがあるため、定期的なメンテナンスが不可欠です。
犬にとって危険となる水の種類
長時間放置された水は雑菌が増えやすい
室内外に置きっぱなしの水は、時間が経つにつれて細菌が繁殖しやすくなります。特に夏場は数時間で水質が悪化することもあり、ぬめりや沈殿物は雑菌増殖のサインです。この水を飲み続けると下痢や嘔吐を引き起こす場合があります。
川や池の水は寄生虫のリスクがある
自然の水辺で犬が水を飲むと、ジアルジアなどの寄生虫、レプトスピラといった細菌に感染する可能性があります。特に雨上がりの水たまりは汚染されやすく、散歩中に飲まないよう注意が必要です。レプトスピラ症は人にも感染する人獣共通感染症であり、重症化すると腎不全や肝障害を引き起こすことがあるため、絶対に避けたい水です。
井戸水は地域により安全性が異なる
井戸水は水質検査をしていれば問題ありませんが、検査していない場合は細菌、硝酸態窒素、鉄分などの濃度が基準を超えることがあります。特に古い井戸や農地の近くの井戸では汚染リスクが高く、犬に与える前に必ず定期検査が必要です。
硬水は犬の体質によって負担になることがある
ミネラルウォーターの中にはカルシウムやマグネシウムが多く含まれる硬水があります。犬の中には、硬水を飲むことで尿石症のリスクが高まるタイプの子もいます。特に結石を繰り返す犬や腎臓に不安がある犬には硬水は避け、軟水または水道水を中心にすることが勧められます。
暑い日のホースの残り水は金属や雑菌の影響がある
屋外でホースの中に残っている水は、気温によって高温になり、ホースの素材が溶け出した成分が含まれることがあります。この水を犬が直接飲むと体に負担がかかる可能性があるため、必ずしばらく流してから使うようにしましょう。
犬が安全に飲める水を確保するためにできること
毎日こまめに水を入れ替える習慣をつくる
水は見た目がきれいでも、時間が経つと空気中のホコリや細菌が混ざります。愛犬が飲む量に関わらず、最低でも朝と夜に交換する習慣をつけることで、細菌の増殖を防ぎやすくなります。特に食後や散歩から戻った直後は、水皿が汚れやすいため注意が必要です。
フードボウル・給水器のこまめな洗浄が重要
水の安全性を保つためには、水そのものより水皿や給水器の衛生管理が重要になることがあります。ぬめりは細菌の塊であり、洗剤を使わないと完全に落ちません。愛犬の健康を守るためにも、毎日しっかり洗い、乾燥させてから水を入れるようにしましょう。
外出時は持参した水を飲ませる
散歩やドッグランで走ると、犬は喉が渇きやすくなります。しかし、外の水を飲ませることはリスクがあるため、できるだけ自宅の水や携帯用ボトルの水を与えるのがおすすめです。特に川遊びをする際は、遊び場の水を飲ませないよう細心の注意が必要です。
犬が水を飲みすぎる・飲まない場合の注意点
多飲や少飲は病気のサインになることがある
水の安全性とは別に、飲水量が大きく変化したときは体調不良が隠れている場合があります。急激に水を飲む量が増える場合は腎臓疾患、糖尿病、ホルモンの病気などが関係することがあり、逆に飲水量が極端に減る場合は脱水や痛み、ストレスの可能性もあります。水の質とあわせて、いつもと違う飲み方をしていないか観察することが大切です。
愛犬の健康を守るために適切な水の管理を
犬にとって水は、生きるうえで最も基本となる栄養素です。水道水は日本では非常に安全性が高く、ほとんどの犬が問題なく飲むことができます。しかし、自然水や放置した水、井戸水や硬水には注意が必要で、状況によっては体調を崩す原因にもなり得ます。水皿の管理やこまめな交換、外出時の水の持参など、日々の小さな習慣が愛犬の健康を大きく守ります。どんな水を飲ませるかを丁寧に選びながら、安心して水分補給できる環境を整えていきましょう。



