犬におもちゃを与えても興味がなさそう…。全く遊んでくれない…。
犬がおもちゃで遊ばないと、飼い主としては少し心配になります。ほかの犬が夢中でおもちゃを追いかけたり噛んだりして遊んでいるのを見ると、自分の犬が遊ばないことに対して「何か問題があるのでは?」と感じるかもしれません。
しかし、犬がおもちゃで遊ばなくなるのには性格や年齢、健康状態、飼い主との関係などさまざまな理由が絡んでいます。
この記事では、犬がおもちゃに興味を示さない理由や、遊ばせるべきかの判断基準、刺激の与え方について解説します。
犬がおもちゃに興味がないのはなぜ?
おもちゃが犬の好みに合っていない
おもちゃに興味がない犬の多くは、単純に「そのおもちゃが好きではない」可能性があります。例えば咥えるのが好きな犬はロープタイプやボールが好きですが、音に敏感な犬は、ピーピー鳴るタイプを怖がることもあります。
また、小型犬にとって大きすぎるおもちゃは扱いにくく、大型犬には物足りないサイズかもしれません。素材の硬さやにおいも関係します。ゴム製が好きな犬もいれば、柔らかいぬいぐるみを好む犬もいます。
こうした「不一致」が続くと、犬はおもちゃ=退屈、扱いにくいものと認識し、遊ばなくなる傾向にあります。
一人遊びよりも飼い主との関わりを求めている
犬はもともと社会性の高い動物で、人とのつながりを大切にします。とくに甘えん坊な性格や、飼い主とのやり取りを楽しむ犬種は一人遊びを好まない傾向があります。
「おもちゃを与えても遊ばない」という状況も、実は「一緒に遊んでほしい」というサインかもしれません。引っ張り合いっこやボール投げなど、飼い主が参加することで初めて遊びが成立する犬も多くいます。
飼い主が無反応でつまらない
犬は非常に人の反応に敏感な動物です。おもちゃで遊んでいるときに飼い主が全く関心を示さないと、徐々にその行動自体をやめてしまうことがあります。
嫌な記憶や失敗体験が影響
かつておもちゃで遊んでいた時に、ケガをした、音に驚いた、飲み込めないものを誤って咥えて苦しくなった……。こうした「嫌な経験」があると、おもちゃそのものに対して不信感を抱くようになります。
一見楽しそうに見える遊びでも、犬にとってはストレスになっていることがあります。思い出として刻まれてしまった体験は犬の行動に長く影響を与えるため、再びおもちゃに興味を持たせるには慎重なステップが必要です。
運動不足やストレスが関心を奪っている
おもちゃに対する関心が薄れている場合、その背景には「心のエネルギー不足」が潜んでいることもあります。下記のような要因は、犬の遊びへの意欲を奪う大きな原因になります。
- 散歩や外出が少ない
- 長時間の留守番
- 刺激のない単調な環境
- 飼い主とのコミュニケーションが少ない
こうした日常が続くと、犬は「なにかに興味を持つ力」そのものを失っていきます。ただおもちゃを増やすだけでは解決せず、まずは生活全体の見直しが求められます。
年齢や体の不調が影響している
高齢期に差し掛かると、体力や興味の傾向が大きく変わります。関節の違和感や歯の痛みがあると、噛むおもちゃや激しい動きには消極的になります。また、若い犬でも口内炎や歯周病などがあると、噛むこと自体が不快になってしまいます。
今まで遊んでいたのに急に遊ばなくなる、元気がないように見えるといったときには、まず健康チェックを優先すべきです。
おもちゃに興味がないけど「遊ばせた方がいい犬」は?
おもちゃでの遊びは犬の生活に良い刺激を与える手段のひとつですが、犬の性格や状態によっては「遊ばせた方がいい犬」と「無理に遊ばせなくていい犬」がいます。おもちゃでの遊びは「義務」ではなく「選択肢」として捉えるのが良いでしょう。
犬の年齢・体調・性格・生活スタイルを見極め、「その子にとって最適な刺激の与え方は何か?」を考えることが、最も大切な判断軸となります。
下記のようなタイプの犬は、遊びを通じた刺激やエネルギーの発散が特に重要です。放置しておくと、ストレスや問題行動につながる可能性もあるため、適切な形で遊びの機会を与えていく必要があります。
若くてエネルギーが余っている犬
- 室内で意味もなく走り回る
- 家具やクッションを噛んだり引っかいたりする
- 飼い主の動きに反応して飛びつく、まとわりつく
上記のような仕草や行動をする成犬や若齢犬は、エネルギー発散が足りていない可能性があります。おもちゃ遊びを通じてエネルギーや体力、ストレスを発散させてあげましょう。
暇そう・退屈そうにしている犬
- じっと飼い主を見つめながらクンクンと鳴く
- 何もないところをずっと舐め続ける
- 寝る・起きるを繰り返して落ち着きがない
飼い主が不在がちで一人の時間が多かったり、家の中に刺激が少なかったりすると、犬は何をしていいのか分からず退屈しやすくなります。こうした状況では、知育玩具や引っ張り遊びなど脳と体を同時に使う遊びを導入することで、充実感を与えることができます。
おもちゃの遊び方が分からない
- おもちゃに近づいて匂いを嗅ぐが、すぐ離れる
- おもちゃを咥えて持ってくるが、遊ばずに離してしまう
上記のような仕草や行動をする犬は、「おもちゃ=楽しいもの」という経験が少なく、遊び方が分からない可能性があります。とくに元野良犬や保護犬はこの傾向があり、飼い主が一緒に遊び方を教えてあげることで、少しずつ興味を引き出すことができます。
「無理に遊ばせなくてもいい犬」は?
一方で、すべての犬に「おもちゃ遊び」が必要なわけではありません。下記のようなタイプの犬には、無理におもちゃで遊ばせようとすることで、かえってストレスを与えてしまうことがあります。
高齢で体力・感覚が落ちている犬
高齢犬は視力や聴力が低下し、関節や筋肉に負担がかかりやすくなっています。無理におもちゃで遊ばせて動かすよりも、安心して過ごせる環境や、飼い主とのゆったりとした触れ合いの時間の方が喜んでくれます。
ただし、おもちゃ遊びは脳の活性化にもつながるため、動きをあまり必要としない遊びを取り入れてみましょう。例えば、おやつをタオルに包んで鼻先で転がしたり引っ張ったりして探す遊びや、飼い主が両手におやつを隠して嗅覚で探させる遊びなどがおすすめです。
散歩や日常の刺激で満足している犬
おもちゃでは遊ばないけれど、散歩を楽しみ、飼い主との触れ合いが十分にできている犬は、「遊び=おもちゃでの活動」でなくても十分に満足しています。こうした犬に、無理に遊びを強要する必要はありません。
遊ぶことよりも静かに過ごすことを好む性格
中には、子犬の頃からおもちゃ遊びに興味を持たず、好奇心よりも落ち着きを好む性格の犬もいます。こうした犬には、遊びのかわりに飼い主とのスキンシップや静かな時間を共有することそのものが良い刺激になっている場合もあります。
まとめ
犬がおもちゃで遊ばないことに対して、必要以上に不安になる必要はありません。大切なのは、犬の個性を理解し、その子にとって何が心地よく、何がストレスになるのかを見極めることです。すべての犬がボールを追いかけたり、ぬいぐるみを噛んだりするわけではありません。
おもちゃで遊ぶことができなくても、犬との関係性が良好で、日々の生活の中で満足感を得ていればそれで十分です。無理に遊ばせようとせず、犬のペースに合わせた関わり方を心がけることが、信頼関係を築くうえで最も大切なポイントです。