ふと愛猫の顔を見たとき、目の周りに目やにがついていたり、涙があふれていたりすると、心配になるものです。猫の目はとても繊細で、わずかな環境の変化や体調の乱れにも敏感に反応します。「ちょっと目やにが多いだけ」と見過ごすのではなく、そこにどんな理由が隠れているのかを知ることで、早期の対処ができるようになります。
健康な猫でも目やには出るが、色や量に注目を
猫の目やには、完全にゼロということはありません。起きた直後や、風が強い日に外を眺めていた後などに、少し目やにがついているのは自然なことです。ただし、それがいつもより多かったり、色が濃かったり、目をしょぼしょぼさせていたりする場合には注意が必要です。特に、「黄色」「緑色」「粘度が高い」といった目やには、体内で炎症が起きている可能性を示唆しています。
目やにが乾いて黒くなったものが目尻に少しついている程度なら、ティッシュやガーゼで優しく拭き取るだけで問題ありません。しかし、湿った状態で何度も出てくるようであれば、何らかの異常が背景にある可能性を考えましょう。
猫の目やにが増える主な原因とは?
目やにの原因は多岐にわたりますが、代表的なものとしてまず考えられるのは「外的刺激」による一時的な反応です。例えば、花粉やハウスダスト、タバコの煙などが猫の目を刺激していることがあります。窓を開けて換気したときに風が入り込むだけでも、敏感な子は涙とともに目やにが増えることがあります。
また、「まつ毛や毛が目に入っている」「異物が目に接触している」場合にも、反射的に涙や目やにが増えます。顔周りの被毛が長い猫種、たとえばペルシャやヒマラヤン、エキゾチックショートヘアなどは特に注意が必要です。
さらに、体調不良が原因となるケースも見逃せません。結膜炎、角膜炎、鼻涙管の詰まり、あるいはウイルスや細菌による感染症などが、慢性的な涙と目やにを引き起こすことがあります。猫風邪の原因となるヘルペスウイルスやカリシウイルスなどは、目やにと同時にくしゃみや鼻水などの症状を伴うことが多く、放置していると症状が重篤化する恐れもあります。
目やにの「色」が伝える体の異変
目やにの色は、単なる汚れか、病気のサインかを見分ける重要なヒントになります。たとえば、茶色や黒っぽい目やには、涙と空気中のゴミや被毛などが混ざって乾いたものが大半で、問題になることは少ないでしょう。起床時に少量ついている程度なら、日常のケアで十分です。
しかし、黄色や緑色といった色の目やにが出ている場合は、炎症や感染の可能性が高くなります。特に緑がかったドロッとした目やにが続く場合は、細菌性の結膜炎が疑われます。こうした色の変化は、体内で免疫細胞が働いているサインであり、何らかの病原体と戦っている状態かもしれません。
一方で、無色透明な涙が長期間流れ続けている場合は、流涙症が疑われます。涙の排出口である鼻涙管が詰まってしまい、涙があふれて目の下の毛が濡れてしまうのです。常に目の下が湿っている、目の周りが赤茶けているなどの症状も、同時に観察されるでしょう。
病気が原因のケースでは早期受診が鍵
目やにの量や色が明らかにいつもと違う、あるいは目をしょぼしょぼさせたり、前足でしきりにこすったりしている様子があれば、早めに動物病院を受診することが重要です。結膜炎や角膜炎などは、適切な治療を行えば比較的早期に回復することが多いですが、放置すると視力に影響を及ぼすこともあります。
また、ウイルス性の疾患では抗ウイルス薬や点眼薬、免疫力を高めるサプリメントなどが併用されることがあります。重度の場合には抗生物質の内服が必要になることもあるため、自己判断ではなく獣医師の診断が欠かせません。
慢性的な涙やけや目やにで悩まされている場合は、アレルギーの有無や基礎疾患のチェックも含めて、血液検査やアレルゲン検査などを提案されることもあります。
自宅でできるケアと予防のポイント
猫の目やにに気づいたら、まずは清潔なコットンやガーゼを使って、ぬるま湯でやさしく拭き取ってあげましょう。乾いてこびりついている場合は、いきなりこすらず、湿らせてふやかしてから拭くと猫にも負担がかかりません。決してアルコール入りのウェットティッシュなどは使わないよう注意が必要です。
室内環境の見直しも予防には効果的です。空気清浄機の使用やこまめな掃除、芳香剤・アロマの制限などで、猫の目に刺激を与える物質を減らすことができます。また、顔まわりの毛が長い場合は、定期的にトリミングすることで、毛が目に入りにくくなり、物理的な刺激の予防につながります。
涙やけを防ぐために、顔まわりを常に清潔に保つことも重要です。特に鼻ぺちゃ系の猫種は涙が目の外にあふれやすく、毛に染み込みやすいため、こまめなふき取りとケアが必要です。涙がついたまま長時間放置すると、そこに雑菌が繁殖し、炎症の原因になることもあります。
まとめ:「なんとなく変かも」と感じたときにできること
猫の体調の異変は、ときにとてもささいな変化から始まります。目やにが増えた、涙が止まらない、目つきが鋭くなった――そうした微妙な変化を感じたときこそが、飼い主の直感が光るタイミングです。すぐに病気とは断定できなくても、「いつもと違う」が続く場合には、記録をとるのもおすすめです。
たとえば、目やにの量や色の変化、いつ出やすいか、片目か両目かといった情報を写真に残したり、簡単なメモにしておくことで、動物病院での診察時に役立ちます。また、普段から定期的に健康チェックをしていれば、急な変化にもすぐ気づけるようになります。
猫の目は、彼らが外界をどう感じ、どう過ごしているかを知るヒントでもあります。目の状態を見守ることは、体の健康だけでなく、心の健康を守るうえでも大切なことなのです。