小型犬の「抱っこ癖」は問題?甘えとの違いと適切な接し方

小型犬の「抱っこ癖」は問題?甘えとの違いと適切な接し方 犬について
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抱っこが好きな小型犬、その背景にある本能と関係性

小型犬を飼っていると、気づけば飼い主の膝の上や腕の中にいるということがよくあります。犬が抱っこをせがんでくる姿はとても愛らしく、つい応じてしまうものですが、あまりにも頻繁に抱っこを要求されたり、地面に降ろすと吠えたり不安そうにしたりする場合、それはただの甘えではなく“依存”のサインかもしれません。小型犬の「抱っこ癖」が強くなる理由や、その背景にある心理を正しく理解することで、犬の心身の健やかな成長を助けることができます。

まず前提として、犬は本来群れで暮らす動物であり、信頼する相手に近づきたがるのは自然な行動です。とくに小型犬は体が小さく、寒さや恐怖に対して敏感であるため、飼い主の腕の中という「安全地帯」を好む傾向があります。しかし、だからといって常に抱っこを許してしまえば、自立心の育成が妨げられるおそれがあります。犬が自分の足で歩き、環境に適応する力を養うためには、「可愛いから」といって何でも受け入れてしまうことが逆効果になるケースもあるのです。

抱っこを好む犬の心理とは?安心・依存・優位性の違い

犬が抱っこをせがむ理由にはさまざまなものがあり、その背景を見極めることが大切です。ひとつは「安心したい」という感情で、これは比較的健全な動機です。外出先で不安を感じたときや、知らない人が近くにいるときに飼い主に抱っこを求めるのは、信頼関係が築けている証でもあります。

しかし、依存傾向のある犬は、飼い主が立ち上がるたびについて回り、座れば膝に飛び乗ろうとします。そしてそれが叶わないと、キュンキュンと鼻を鳴らしたり、吠えたりすることもあります。これは「安心」よりも「飼い主がいないと不安で何もできない」という状態であり、分離不安の初期兆候とも考えられます。

さらに見逃されがちなのが、犬が“抱っこされること”を自分の優位性と勘違いしているケースです。とくに飼い主が犬の要求にすぐ応じてしまう家庭では、「吠えれば思い通りになる」「自分が上」と認識し、指示に従わない、他の犬に威嚇するなど、行動に問題が出ることもあります。

小型犬に多い「抱っこ癖」が生まれやすい生活環境

小型犬は大型犬に比べて、常に飼い主の視界に入りやすい場所で暮らしており、気づけば家の中でも飼い主の移動に合わせてついて回ることが多くなります。また、外出時にはキャリーバッグやスリングに入れて移動する機会が多いため、自ら歩く経験が少ないまま成犬になる場合もあります。

さらに、飼い主側にも「小さくて心配だから、地面に下ろすのが怖い」「人混みや車が危ないから」といった理由で、過剰に抱っこしてしまう傾向があります。こうした習慣が積み重なることで、犬自身も「歩かないのが当たり前」「抱っこが基本」と覚えてしまい、自発的な行動意欲が薄れてしまうのです。

また、家族構成やライフスタイルも影響します。家族から過保護に扱われる、またはひとり暮らしの飼い主と密着した生活を送っている場合、犬は“孤独を感じる=抱っこをせがむ”というパターンを覚えやすくなります。

抱っこ癖のある犬の問題点とそのリスク

一見可愛らしく見える抱っこ癖ですが、いくつかの問題点が潜んでいます。最も大きな問題は、精神的な自立ができずに不安症や依存症を助長してしまうことです。これは留守番時の問題行動や夜鳴き、過度な後追いなどにつながり、飼い主にとっても大きなストレスとなり得ます。

また、運動不足も無視できません。抱っこが常態化してしまうと、外出先でも歩かなくなり、筋力の低下や肥満を招きます。さらに、足腰の筋肉が弱くなることで関節疾患のリスクが高まるなど、長期的に見て健康面にも悪影響が及びます。

加えて、他の犬との関わりが極端に少なくなり、社会性が育ちにくくなるという点も注意が必要です。常に飼い主に守られる位置にいる犬は、自分からほかの犬に近づく機会が減り、結果として吠えたり威嚇したりするなど、社会的な不安定さを抱えることになります。

正しい対応で「抱っこ癖」を緩和する方法

抱っこ癖が強い犬に対しては、まず「飼い主がすぐに応じることをやめる」ことから始めましょう。抱っこを求めてきても、無視するのではなく「今は歩こうね」と声をかけ、自ら歩くように促す姿勢が大切です。そして、歩けたことをしっかりと褒め、成功体験を積ませていくことが、徐々に自信を育てる第一歩となります。

また、生活の中で「抱っこ以外の楽しみ」を増やすことも効果的です。おもちゃ遊びや簡単なトリック練習、知育玩具などを取り入れて、飼い主の腕の中以外にも楽しい体験があることを教えましょう。自宅での“抱っこタイム”も、時間を決めてあえて短くし、あまり習慣化させないよう意識することが重要です。

さらに、家の中でもサークルやマットなど、「ここで休む」「ここにいれば安心」という場所を用意し、飼い主の膝以外の居場所を作ってあげる工夫も有効です。飼い主がその場から離れてもリラックスして過ごせるようになれば、自立への大きな一歩となります。

それでも抱っこをやめられないときは?

「抱っこしないとパニックになる」「震えて動かない」といった場合は、無理にやめさせることは逆効果になります。まずは犬が何に不安を感じているのかを見極め、その原因を取り除くことが優先です。たとえば、外の音に敏感すぎる場合は防音ケアをしたり、他の犬に怯えている場合は距離をとって慣らしていく必要があります。

また、行動療法やトレーニングによって段階的に改善するケースも多くあります。専門家のサポートを受けながら、無理のない範囲で少しずつ環境に慣らしていくことが成功の鍵となるでしょう。過剰な甘やかしが依存を招くこともありますが、逆に過剰な拒否も信頼関係を損ねる原因になります。バランスの取れた接し方がなにより大切です。

抱っこが必要なとき、してはいけないタイミングとは?

犬を抱っこすること自体は悪いことではありません。むしろ、病院や災害時、トリミング中など、安全確保のためには抱っこが必要な場面もあります。しかし、それを「犬が騒いだから」「吠えたから」するという習慣がついてしまうと、犬は“吠える=抱っこしてもらえる”と学習してしまいます。

とくに、要求吠えの直後に抱っこをすると、間違った学習が強化されてしまいますので、落ち着いてから抱き上げる、または別の行動に置き換える工夫が求められます。飼い主の行動が一貫していることで、犬は「抱っこにはルールがある」と理解し、過剰にせがむことが減っていきます。

まとめ:犬の抱っこ癖は“甘やかし”ではなく“育て方”で変わる

小型犬の抱っこ癖は、その可愛さゆえに許されてしまいがちですが、そのまま放置すれば心身の健やかな成長を妨げる原因にもなりかねません。大切なのは、抱っこを「愛情表現」として活用しながらも、それに依存しない生活を作ること。犬が自分で歩き、考え、楽しむ時間を持てるようにサポートしてあげることが、飼い主に求められる本当の優しさです。

飼い主が意識を変えれば、犬もまた少しずつ変わっていきます。抱っこが好きなことは悪いことではありませんが、それが生活の中心にならないよう、上手にバランスを取りながら、犬との関係性を見直してみましょう。

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