冬は気温の低下や乾燥が進む時期であり、犬の体にもさまざまな負担がかかります。体温調節が苦手な犬や、高齢犬、持病のある犬ほど影響を受けやすく、冬の環境変化がきっかけで体調を崩すことも珍しくありません。
ここでは、冬に特に増える犬の病気を5つ取り上げ、それぞれの特徴や症状、日常での注意点を解説します。寒い季節を安全に過ごすためには、飼い主が冬に多いリスクを正しく理解し、早めの予防と対策を行うことが欠かせません。
1. 低体温症(寒さによる体温低下)
低体温症とはどんな病気か
冬になると気温の急激な低下により、犬がうまく体温を保てなくなることがあります。とくに短毛種や小型犬、子犬や高齢犬は体温を保持する能力が低いため、冷気の影響を受けやすい傾向があります。散歩中に強い冷風に当たったり、暖房のない部屋で長く過ごしたりすることが引き金になります。
低体温症の症状と注意点
体温が下がると震えが見られ、活動量が減ってじっとしている時間が長くなります。重度になると意識が低下し、呼吸や心拍が弱まることもあり、非常に危険な状態に陥る可能性があります。冬は室内でも思った以上に冷えることがあるため、寝床は床から高さをつけ、暖かい毛布やベッドで保温することが大切です。また、外出時には防寒着を活用し、天候が悪い日は散歩時間を調整することも考えるべきです。
2. 乾燥による皮膚トラブル
冬に皮膚トラブルが増える理由
冬の空気は湿度が低く、暖房器具を使うことでさらに乾燥が進みます。犬の皮膚は人間よりも薄くデリケートであるため、水分不足が続くとバリア機能が弱まり、かゆみや赤み、フケの増加などのトラブルが起こります。アトピー体質の犬やアレルギーを持つ犬は、乾燥がきっかけで症状が悪化することもあります。
乾燥による症状と日常での対策
皮膚をかく回数が増えたり、被毛のツヤがなくなったりする場合は乾燥が進んでいるサインといえます。過剰なシャンプーは皮脂を奪い、症状を悪化させるため控えるべきです。加湿器で室内の湿度を保ち、保湿成分のあるスプレーやオイルを獣医師と相談のうえ使うことが望まれます。冬は皮膚トラブルを長引かせることが多いため、早めの対応が重要です。
3. 関節炎(寒さで悪化しやすい疾患)
冬に関節の痛みが強くなる理由
気温が下がると血行が悪くなり、筋肉や関節がこわばりやすくなります。若く健康な犬でも寒さで動きが悪くなることがありますが、特にシニア犬や関節の疾患を抱える犬では症状が強く現れます。冬の冷え込みは炎症を誘発し、関節の痛みを慢性的に悪化させる要因となります。
関節炎で見られる行動の変化と注意点
散歩の歩幅が小さくなったり、段差を嫌がるようになったりすることが多く、普段より立ち上がりに時間がかかるのも特徴です。寒さが続く日は、散歩前に室内で軽く体を温めてから外へ出ることで負担を減らせます。滑りやすい床は関節に負担をかけるため、カーペットなどで対策することも大切です。冬は関節の不調が進行しやすいため、痛みが続く場合は早めに獣医師に相談する必要があります。
4. 呼吸器感染症(気管支炎・肺炎など)
冬に呼吸器の病気が増える理由
冬はウイルスが活発になり、乾燥によって喉や気管の粘膜が弱まりやすくなります。冷たい空気を吸い込むこと自体も気道の刺激となり、咳が長引く原因につながります。特に気管が細い小型犬や短頭種は呼吸器症状が出やすく、体力の落ちている犬では重症化するケースもあります。
呼吸器感染症の症状と気を付けたい習慣
咳が続く、呼吸が荒い、運動を嫌がるなどの症状が見られたら注意が必要です。換気をしつつも冷たい風が直接当たらないように工夫し、散歩の時間帯は気温が高い昼前後を選ぶことが望ましいといえます。乾燥対策は呼吸器の健康に直結するため、加湿は継続して行うことが重要です。感染症が疑われる場合は早めに検査を受けることで、重症化を防ぐことができます。
5. 胃腸トラブル(寒暖差やストレスが原因)
冬に胃腸トラブルが起こりやすい背景
冬は気温差が大きく、生活リズムも不規則になりやすい季節です。寒さで自律神経のバランスが乱れ、消化機能が低下することがあります。また、年末年始に人が集まる機会が増え、環境の変化やストレスによって胃腸の調子を崩す犬も少なくありません。つい与えがちなおやつや人間の食べ物も、消化器負担の一因となります。
胃腸トラブルで見られる症状と注意点
食欲の低下、軟便、嘔吐などが続く場合、胃腸に負担がかかっているサインです。急な食事変更は避け、冬場は特に消化に優しい食事を意識する必要があります。冷たい水が苦手な犬も多いため、常温の水を用意してこまめに飲ませることが大切です。ストレスを減らすために生活リズムを整え、過度な来客や騒がしい環境から犬を守ることも重要です。
冬に犬の健康を守るために飼い主ができること
冬に見られる犬の病気は、寒さと乾燥が大きな原因となっています。日常のなかで気温差を減らし、室内環境を整えることで予防できる病気は多くあります。防寒対策を徹底し、室内では保温と加湿を意識し、食事や散歩の時間帯にも気を配ることが大切です。わずかな変化でも早く気づくことができれば、重い病気を防ぐことにつながります。冬は犬にとって負担の大きい季節ですが、適切なケアを行うことで安心して過ごすことができるでしょう。


