犬が手術を受けたあと、飼い主のケアがその後の回復に大きな影響を与えます。手術の種類や犬の年齢、体力によって回復スピードは異なりますが、共通して重要なのは「安静」「栄養管理」「ストレスの軽減」です。
本記事では、犬の手術後の過ごし方、食事の工夫、飼い主がやるべきサポートについて詳しく解説します。また、猫との違いにも触れながら、犬に最適な術後ケアのポイントを紹介します。
手術直後の犬の様子と飼い主がすべきこと
術後の麻酔から覚めたあとの状態とは
手術後の犬は、麻酔の影響で一時的に意識がもうろうとしていたり、ふらつきが見られたりします。瞳孔が開いたまま、落ち着きなく歩こうとすることもありますが、これは一時的な反応です。ふらつく足取りを見て心配になるかもしれませんが、無理に歩かせず、クレートやベッドで静かに休ませてください。
自宅での安静が重要な理由
術後の犬は体力を消耗しており、また縫合部分が完全に癒えるまでには時間がかかります。散歩を控え、なるべく安静に過ごさせることが必要です。特に跳ねたり走ったりすることで傷口が開いたり、内出血が起きたりする可能性もあるため、家具の配置や段差への対策が必要です。必要に応じてケージでの管理も視野に入れましょう。
傷口のチェックと注意点
手術痕がある場合、飼い主が毎日その様子を観察することが大切です。赤みが強くなってきたり、腫れや膿が出るようであれば、感染の兆候が考えられます。カラー（エリザベスカラー）を着けていても、隙を見て傷を舐めようとする犬もいます。できるだけ清潔を保ち、異常があればすぐに動物病院に相談しましょう。
手術後の食事管理：ごはんはいつから？どんなものを与える？
術後すぐの食欲低下は自然な反応
手術のストレスや麻酔の影響により、手術当日から翌日にかけては食欲が落ちることがあります。無理に食べさせる必要はありませんが、水分補給は忘れずに。脱水が進むと回復にも影響するため、こまめに水分を取らせることが重要です。
食事再開のタイミングと量の目安
獣医師からの指示があれば、食事は術後12〜24時間以内に少量から再開できます。胃腸の負担を避けるため、いつもより少なめの量を数回に分けて与えるとよいでしょう。食べない場合は無理強いせず、匂いを強く感じられる温かいウェットフードなどを使ってみるのも一つの手です。
術後の体に優しい食事の選び方
手術後の回復を支えるためには、消化に優しく、栄養バランスの整った食事が求められます。市販の「リカバリーフード（療法食）」や「シニア用」「低脂肪」「消化器サポート」などの表記があるフードが望ましいです。手作り食を与える場合は、獣医師と相談しながらたんぱく質・脂質・水分・ビタミンのバランスを意識して調理する必要があります。
飼い主ができるメンタルケアと環境づくり
手術後の犬は不安定な心理状態に
手術の痛みや病院での体験から、犬は心身ともに疲弊しています。飼い主の声や手のぬくもりは犬にとって大きな安心材料になります。無理に元気づけようとせず、静かに寄り添ってあげましょう。
環境を整えることで回復を早める
術後の犬には、普段以上に落ち着ける空間が必要です。お気に入りの毛布やベッドを使い、音や光の刺激が少ない場所に寝床を設置します。室温にも注意し、冷えや暑さで体力が消耗しないよう、適度な湿度・温度管理を心がけましょう。
術後の経過観察と再診の重要性
術後1週間程度で抜糸や経過観察のために再診が予定されていることがほとんどです。たとえ元気そうに見えても、体の中で炎症や内出血が起きている場合があります。再診では術後の回復状況や傷の治癒具合を確認するため、必ず指示通りに通院しましょう。
また、再診までは体調メモをつけておくと、獣医師への説明もスムーズになります。食欲や便の様子、嘔吐の有無などを記録しておくことで、早期の異変察知につながります。
猫との違い：犬特有の注意点とは
犬は猫よりも活動的なぶん、安静管理が難しい
犬と猫では術後の反応にも違いがあります。猫は比較的じっとしている傾向があり、安静管理がしやすい一方で、犬は飼い主の動きに反応しやすく、喜んで動こうとすることがあります。散歩を欲しがったり、来客に反応したりする場合もあるため、飼い主が積極的に落ち着いた行動をとる必要があります。
食事に対する興味の強さにも注意が必要
犬は猫に比べて食べ物への執着が強く、術後であってもフードを見ると飛びつこうとすることがあります。興奮によって縫合部に負担がかかるため、落ち着いて食事ができるよう時間帯や与え方を調整することが求められます。また、猫のように「食べなければすぐ心配」というケースは少ないため、食欲低下が一時的であれば経過を観察して問題ありません。
ストレスの表現方法にも差がある
猫は環境の変化に敏感で、術後は隠れてしまうことがあります。一方犬は、ストレスを吠える・歩き回る・飼い主に甘えるといった形で表す傾向が強いため、術後はより繊細な観察と対応が求められます。
まとめ：手術後のケアで未来が変わる
犬の手術は大きな出来事ですが、術後のケア次第で回復スピードや生活の質は大きく変わります。飼い主の冷静な対応と、犬に寄り添う姿勢が最も重要です。ごはんの与え方や環境づくりに細やかな気配りを加えるだけで、犬は安心して回復への道を歩むことができます。猫との違いも意識しながら、その子に合った術後ケアを実践していきましょう。
