「いつか大型犬を飼ってみたい」「大型犬の飼い方を知りたい」と考えている人は多いでしょう。ふわふわの被毛に包まれた大きな体、優しく穏やかな性格、家族の一員として寄り添ってくれる存在──大型犬には、他の犬種にはない魅力がたくさんあります。
一方で、その体の大きさゆえに、日々のケアや運動、生活スペース、食費など、思っている以上に気を付けることも多いのが現実です。
この記事では、大型犬を迎える前に知っておきたい「大変なこと」と「幸せに暮らすための準備」を、これから飼いたい人にもわかりやすく解説します。憧れの大型犬ライフを、無理なく、そして楽しく現実にするためのヒントをお届けします。
大型犬を飼うのは大変?
日本で主に人気の大型犬種は下記です。
- ゴールデン・レトリバー
- ラブラドール・レトリバー
- ダルメシアン
- シベリアン・ハスキー
- バーニーズ・マウンテン・ドッグ
- グレート・ピレニーズ
- ジャーマン・シェパード・ドッグ
- ボーダー・コリー
- ドーベルマン
- サモエド
- フラットコーテッド・レトリバー
大型犬は存在感があり、飼い主との信頼関係が深くなればなるほど、人生を豊かにしてくれる存在です。ただし、体の大きさに比例して「手間」「費用」「時間」「空間」も大きくなります。
たとえば、1日の運動量は小型犬の数倍、食費も倍以上かかるケースが珍しくありません。さらに、老犬期に介護が必要になったとき、体重40kg前後の犬を抱き上げるのは容易ではありません。大型犬を「かわいいから」「あこがれだから」という理由だけで迎えると、現実とのギャップに戸惑うこともあるでしょう。
そのため、まずは「自分や家族の生活スタイルに合うか」を冷静に見極めることが何よりも大切です。
飼う前に知っておきたい大型犬の特徴
大型犬は体重25kg以上を超える犬種が多く、骨格も筋肉も発達しています。そのため、運動不足や体重過多は関節や心臓への負担を招きやすく、健康維持には十分な運動と栄養バランスが不可欠です。
また、知能が高く社会性があるため、しつけを怠ると問題行動につながることもあります。人に飛びついたり、引っ張り癖があると、力の強さから事故に発展する危険もあります。
大型犬を迎える前に「自分が最後まで責任を持って扱えるか」「十分な時間と体力があるか」を確認しておく必要があります。
大型犬の飼い方と生活環境の整え方
1. 広さと居場所を確保する
大型犬は動きが大きく、寝返りひとつでもスペースを必要とします。理想的には6畳以上のスペースを自由に動けるようにし、ケージも「休息の場」として広めのサイズを選ぶことが望ましいです。滑りにくい床材を敷いたり、階段の昇降を制限するなど、関節への負担を軽減する工夫が欠かせません。
2. 運動量を満たすこと
大型犬にとって「散歩」は単なる排泄の時間ではなく、心身の健康を保つための重要な活動です。朝夕の1時間ずつ、合計2時間以上の散歩が理想的です。天候や飼い主の都合で運動量が減るとストレスや肥満、破壊行動につながることもあるため、広い公園やドッグランで思いきり走らせてあげたり、室内でも知育トイを取り入れたりとバランスをとりましょう。
ただし、過度な運動は関節を痛めることもあるため、成長期の犬では特に注意が必要です。
3. 食事と健康管理
大型犬は成長スピードが早く、関節や骨の発達期にはカルシウムやリンのバランスが特に重要です。大型犬専用の総合栄養食を選び、急激な体重増加を避けるようコントロールすることが大切です。
また、消化器系がデリケートな犬種も多く、早食いやガスの発生による胃捻転(胃拡張捻転症候群)に注意が必要です。食事を1日2〜3回に分け、食後はすぐに激しい運動をさせないようにしましょう。
4. しつけとコミュニケーション
大型犬のしつけは「力で制する」のではなく「信頼で導く」ことが基本です。
子犬期から社会化を進め、さまざまな人や犬、音、環境に慣らしておくことで、成犬になってからのトラブルを防ぐことができます。「マテ」「スワレ」「オイデ」といった基本コマンドは、散歩中や公共の場で安全を守るためにも欠かせません。しつけがうまくいくと、家庭内での生活がぐっと快適になり、飼い主との絆も深まります。
5. 被毛と衛生管理
大型犬は毛量が多く、換毛期には抜け毛が驚くほど増えます。ブラッシングは最低でも週に3〜4回、できれば毎日行うとよいでしょう。体臭やよだれが多い犬種もいるため、こまめな耳掃除や歯磨きも習慣にすることが大切です。
また、大型犬は体が大きいためシャンプーやトリミングに時間がかかり、業者に依頼すると費用も高額になりがちです。自宅でのケアを取り入れることで、負担を軽減できます。
大型犬に向いている家庭・向いていない家庭
向いている家庭
- 毎日1〜2時間の運動時間を確保できる人
- 広い居住スペース(または庭)がある家庭
- 家族全員が動物好きで、協力して世話をできる環境
- 経済的に安定しており、医療費や食費の負担を継続できる人
- 最期まで責任を持ち、介護まで視野に入れられる人
大型犬との暮らしは「体力と時間の共有」が求められます。忙しさを理由に散歩を省くことは、犬にとってストレス以外の何物でもありません。時間にゆとりがあり、心身ともに寄り添える家庭が理想的です。
向いていない家庭
- 日中不在で長時間留守が多い家庭
- 狭いアパートやペット不可の住宅
- 犬を「番犬」や「ステータス」として考えている人
- 高齢や体力に不安があり、大型犬の介助が難しい人
- 経済的に余裕がなく、医療費や餌代が負担になる家庭
特に「大きい=安心」というイメージだけで迎えると、扱いに困るケースも少なくありません。大型犬は力が強く、適切なリードコントロールができなければ他人を驚かせたり、事故を招く可能性もあります。
また、シニア犬になれば介助や床ずれ予防、歩行補助などのケアも必要です。見た目の可愛さだけでなく、10年以上のライフプランを見据えることが欠かせません。
大型犬と快適に暮らすための工夫
大型犬は家族の一員として深い愛情を注げば、その分だけ応えてくれる存在です。暮らしを快適にするためには、「犬の行動特性に合わせた環境づくり」が鍵となります。フローリングには滑り止めマットを敷き、寝床は体圧を分散できる低反発マットを選びましょう。食器台は高さを合わせることで食べやすくなり、姿勢負担を軽減できます。また、エアコンの温度設定にも注意し、夏場は熱中症、冬場は冷えによる関節痛を防ぎます。
さらに、心の健康にも配慮しましょう。大型犬は寂しがり屋の一面があり、長時間の孤独は問題行動につながることもあります。声かけやスキンシップを日常的に行い、安心できる関係を築くことが何よりの予防策です。
まとめ
大型犬を飼うということは、単に「大きな犬を育てる」だけではなく、「もう一人の家族として共に生きる」覚悟を持つことです。その生活は確かに大変で、時間もお金も労力も必要です。しかし、毎日の散歩やスキンシップを通じて生まれる信頼関係は、小型犬では得られない深い絆となります。迎える前に「自分の暮らしに本当に合うか」を見極め、準備を整えた上で迎え入れることが、愛犬にとっても飼い主にとっても幸せな第一歩です。



