散歩中に寄せられる「撫でてもいいですか?」の問い
犬と一緒に外を歩いていると、思わぬ形で知らない人に声をかけられることがあります。その中でも特に多いのが、「撫でてもいいですか?」という質問です。犬好きの人にとっては自然な言葉かもしれませんが、飼い主としては即座に「どうぞ」と返していいのか、一瞬戸惑う場面でもあります。
すべての犬が撫でられることに慣れているとは限らず、中には警戒心が強かったり、知らない人に触られることでストレスを感じたりする犬もいます。こうした状況で適切に対応するためには、飼い主が犬の性格や状況を正確に把握しつつ、第三者とのコミュニケーションを丁寧にとることが求められます。
知らない人に撫でられることの犬への影響
知らない人に撫でられることが苦手な犬もいる
犬にはそれぞれ個性があり、社会性の程度も異なります。子犬の頃から他人とのふれあいに慣れていれば、撫でられることに喜びを感じるかもしれませんが、そうでない犬は緊張したり、怖がったりします。特に保護犬などは過去の経験から見知らぬ人に対して強い不安を覚えることもあり、そういった犬にとっては「撫でられる」ことがストレスになりかねません。
撫でようとする人にとっては善意でも、犬にとっては予期せぬ侵入と感じられ、防衛本能から吠えたり、唸ったり、時には噛みついてしまうリスクもあるのです。
興奮やパニックを引き起こすこともある
犬が撫でられることで喜びすぎて興奮状態に陥るケースもあります。一見問題がないように思えても、過度にテンションが上がると制御が難しくなり、飛びついたり、リードを強く引っ張ったりといった行動に出ることがあります。
また、急に手を伸ばされたり、頭の上から触られるような行為は、犬にとって「脅威」と感じやすい動きであり、パニックを引き起こすきっかけになりかねません。そうした反応が出たときに落ち着かせるには、飼い主の冷静な対応と犬への理解が欠かせません。
飼い主が取るべき対応と心構え
まずは犬の性格をよく知ることが大前提
「撫でてもいいですか?」と聞かれたときに返答を迷わないためには、日ごろから自分の犬の性格や行動傾向をしっかり把握しておくことが重要です。人見知りをするのか、どのような触り方に敏感なのか、犬自身がどう感じているかを観察し続けていく必要があります。
特に、以前に知らない人に驚いてしまった経験がある犬は、同じ状況を避けるために飼い主がしっかり防衛ラインを設けるべきです。無理に「社交的な犬」として扱うのではなく、その子の「安心」を最優先に考える姿勢が大切です。
「撫でても大丈夫ですか?」に対する適切な返し方
質問された際の返し方は、その場の状況と犬の状態によって変わります。もし犬がリラックスしており、人に触られるのが平気であれば、「大丈夫ですが、ゆっくり近づいていただけますか?」と一言添えるのが理想的です。
逆に、不安そうな様子が見られたり、知らない人が苦手な犬であれば、「すみません、ちょっと人が苦手で…」と丁寧に断るようにしましょう。このとき、断ることに後ろめたさを感じる必要はまったくありません。犬の安全と安心を守ることが飼い主の第一の役目です。
子どもや犬に慣れていない人が相手のときの注意点
子どもには特に慎重な対応が求められる
犬好きの子どもが、無邪気に「撫でたい!」と近づいてくる場面は珍しくありません。しかし、子どもの動きは予測が難しく、犬を驚かせてしまうこともあります。勢いよく近づいたり、急に触ったりすることで、犬が驚いて吠えたり、逃げようとしたりする可能性があるため、飼い主がしっかり制止する必要があります。
相手が子どもであっても、犬の反応を見極めながら、「おててを下から出してね」「頭じゃなくて背中をなでてあげてね」といったアドバイスをしながら安全に触れ合いの機会を提供できれば、お互いにとって良い経験となるでしょう。
犬に慣れていない人の「撫で方」にも注意する
犬にあまり接したことのない人は、撫で方に迷うことがあります。突然頭に手を伸ばしたり、正面から目をじっと見つめるような行動は、犬にとって威圧的に感じられることがあり、警戒心を高めてしまう原因になります。
犬が緊張し始めたら、飼い主の方から「背中の方が安心するみたいです」など、具体的なアドバイスをしてあげることで、犬も相手も安心して触れ合うことができます。
撫でられる練習は必要か?社交性を育てるポイント
犬が他人に撫でられることに対して過敏に反応する場合、無理に慣れさせようとするのは逆効果になりかねません。しかし、将来的に多くの人と接する場面があることを考えれば、少しずつ社会化のトレーニングを進めることも選択肢のひとつです。
信頼できる知人や家族に協力してもらい、少しずつ触れられることに慣れさせるような段階的なアプローチが有効です。最初は「近くに立ってもらう」だけでもよく、徐々に距離を縮めながら犬の様子を観察し、ストレスの兆候が出ない範囲でステップを進めるようにしましょう。
犬を守るのは飼い主の責任
犬は言葉で「嫌だ」と言えない分、飼い主が代わりにその気持ちをくみ取ってあげなければなりません。「撫でられても平気」な犬であっても、相手の態度や状況によっては不安定になることがあります。だからこそ、どんなときでも「この子はどう感じているか?」という視点を持ち続けることが大切です。
外でのコミュニケーションは人間社会においては貴重なものですが、無理にすべてに応じる必要はありません。犬にとっての快適さと安全を最優先に考え、適切な距離感と判断力を持つことが、良き飼い主としての姿勢だといえるでしょう。