猫の健康状態を知る上で、尿の色や量、回数の変化は非常に重要なサインです。普段からトイレの様子を観察しておくことで、病気の早期発見につながります。
本記事では、正常な尿の特徴から異常な尿が示す可能性のある病気、そして家庭でできるケアまでを詳しく解説します。
正常な猫の尿の色と状態
健康な猫の尿は淡い黄色
健康な猫の尿は、淡いレモン色から薄い麦茶色のような色をしています。濃すぎず、透明度のある黄みがかった色が理想的です。この色は体内の水分バランスが正常で、腎臓がしっかり機能していることを示しています。
また、尿のにおいはややアンモニア臭がありますが、強烈ではありません。砂を替えるたびに強い臭気を感じる場合は、脱水や腎機能低下の可能性もあります。
尿量と回数の目安
成猫の場合、1日の排尿回数は平均2〜4回ほどが目安です。個体差はありますが、トイレを1日中まったく使っていない、あるいは何度もトイレに行くのにほとんど尿が出ない場合は注意が必要です。
健康な猫では、1日あたりの尿量は体重1kgあたり20〜30ml程度。3kgの猫ならおおよそ60〜90mlが正常範囲です。
尿の色でわかる異常のサイン
濃い黄色やオレンジ色の尿
尿が濃い黄色〜オレンジ色の場合、水分摂取量が不足しているか、脱水状態の可能性があります。夏場や暖房の効いた室内など、乾燥しやすい環境では特に注意が必要です。
また、肝臓や胆道系の異常(肝炎、胆管閉塞など)でも尿が濃くなることがあります。白目や歯茎が黄色っぽく見える場合は、黄疸のサインであり、早急な受診が必要です。
赤色・ピンク色・茶色の尿
赤っぽい尿は、血尿の可能性があります。血が混ざることでピンク〜赤〜茶色と濃淡が変化します。猫で血尿が見られる代表的な原因は、膀胱炎や尿路結石です。とくにオス猫は尿道が細く、結石が詰まりやすいため、尿が出にくい・トイレで力むなどの行動があれば危険信号です。
また、腎臓疾患や腫瘍でも血尿が起こる場合があります。単なる一過性のものと見過ごさず、必ず獣医師の診察を受けましょう。
無色・透明すぎる尿
無色に近い尿が続く場合は、腎臓の濃縮機能が低下している可能性があります。腎不全や糖尿病などで尿が薄くなることがあり、特に多飲多尿を伴う場合は注意が必要です。
飲水量の増加と尿の透明化は「慢性腎臓病」の典型的な初期症状でもあります。早期発見できれば進行を遅らせる治療が可能です。
白濁した尿
白っぽく濁った尿は、細菌感染や炎症を示す場合があります。膀胱炎や尿道炎などで膿が混じると、尿が白濁して見えることがあります。とくにメス猫では細菌性膀胱炎が起こりやすく、トイレの回数増加や排尿時の鳴き声が伴うこともあります。
尿の回数・量から考えられる異常
尿の回数が極端に少ない場合
1日以上排尿が見られない場合、尿路閉塞の可能性があります。これはオス猫で特に多く、命に関わる緊急事態です。膀胱に尿がたまり続けることで、毒素が体内に逆流し、急性腎不全を引き起こします。一刻も早く動物病院で処置を受けることが必要です。
尿の回数が多い場合
頻繁にトイレに行くのに少しずつしか出ない場合は、膀胱炎や尿道炎が疑われます。逆に、大量に出る場合は糖尿病や腎不全、甲状腺機能亢進症などの内科的疾患の可能性もあります。体重減少や食欲の変化が見られるときは、血液検査が有効です。
尿の異常で考えられる主な病気
膀胱炎
最も一般的な泌尿器疾患で、細菌感染やストレス、結石の刺激などが原因で起こります。血尿や頻尿、排尿痛がみられ、猫がトイレの外で排尿してしまうこともあります。ストレスやトイレ環境が関係する「特発性膀胱炎」も多く、再発しやすいのが特徴です。
尿路結石症
尿中のミネラルが結晶・結石となり、尿の通り道を塞いでしまう病気です。結石の種類にはストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)やシュウ酸カルシウムなどがあり、食事や尿のpHが影響します。結石による閉塞は命に関わるため、早期の治療と食事管理が重要です。
慢性腎臓病
高齢の猫に多く、腎臓の機能が徐々に低下する病気です。初期は目立った症状がなく、尿が薄くなる・飲水量が増えるといった微妙な変化から始まります。血液検査や尿検査で早期発見し、腎臓サポートフードや投薬で進行を遅らせる治療が行われます。
糖尿病
多飲多尿が特徴で、尿が大量に出るのに体重が減る場合は要注意です。インスリンの分泌や作用が不十分になり、血糖値が高くなる病気です。治療には食事療法とインスリン投与が必要になります。
家庭でできる尿トラブルの予防とケア
十分な水分補給を促す
猫はもともと水をあまり飲まない動物ですが、泌尿器の健康維持には水分摂取が不可欠です。水皿を複数置いたり、循環式給水器を利用するなどして、いつでも新鮮な水が飲める環境を整えましょう。ウェットフードを併用するのも効果的です。
トイレ環境を清潔に保つ
汚れたトイレは排尿を我慢する原因となり、膀胱炎のリスクを高めます。猫の数+1個のトイレを設置し、常に清潔な状態を維持することが大切です。砂の種類や設置場所も、猫の好みに合わせて見直すとよいでしょう。
ストレスを軽減する環境づくり
引っ越し、同居動物の変化、大きな音など、環境ストレスは特発性膀胱炎の引き金になります。安心できる隠れ場所を用意し、生活リズムを崩さないよう配慮することが予防につながります。
定期的な健康チェック
年1回以上の健康診断、特に尿検査や血液検査は早期発見に有効です。中高齢期(7歳以上)では半年ごとにチェックするのが理想的です。早期に腎臓や泌尿器の異常を見つけることで、治療成績が大きく変わります。
まとめ:尿は猫の健康を映す鏡
尿の色や量、回数の変化は、猫が自分で伝えられない体調不良を知らせる大切なサインです。普段からトイレ掃除の際に尿の状態を観察することで、病気の早期発見が可能になります。少しでも「いつもと違う」と感じたら、迷わず動物病院で相談しましょう。日々の観察とケアこそが、猫の健康を守る第一歩です。



