猫の去勢・避妊手術は、望まない繁殖を防ぐだけでなく、病気の予防やストレス軽減といった面でも重要な選択肢です。一方で、手術後に「性格が変わった」「太りやすくなった気がする」と感じる飼い主も少なくありません。
ここでは、去勢・避妊手術後に見られやすい変化について詳しく解説します。
猫の去勢・避妊手術後に起こる主な変化
行動や性格の変化
去勢・避妊手術後、最も分かりやすく変化しやすいのが行動面です。発情に関係するホルモンの分泌が抑えられることで、これまで見られていた強い鳴き声や落ち着きのなさ、脱走しようとする行動が次第に減っていく傾向があります。とくにオス猫では、スプレー行動と呼ばれるマーキング行動が軽減されることが多く、室内での生活が安定しやすくなります。
また、全体的に穏やかになったと感じる飼い主も多く、他の猫や人に対する攻撃的な態度が和らぐケースもあります。ただし、性格そのものが別の猫のように変わるわけではなく、もともとの気質にホルモンの影響が加わっていた部分が落ち着く、と理解するとよいでしょう。
活動量の変化と睡眠時間
去勢・避妊手術後は、活動量がやや減る傾向があります。発情期特有の落ち着きのなさや衝動的な行動がなくなるため、以前よりも寝ている時間が増えたように感じることがあります。これは異常ではなく、体が安定した状態に移行しているサインと考えられます。
ただし、極端に動かなくなったり、元気がない状態が長く続いたりする場合は、手術後の体調不良や別の病気が隠れている可能性もあるため注意が必要です。
食欲と体重の変化
去勢・避妊手術後の変化として、飼い主が特に気にしやすいのが体重増加です。ホルモンバランスの変化により基礎代謝が低下し、同じ量の食事を続けていると太りやすくなる傾向があります。また、発情による食欲低下がなくなることで、食べる量が安定または増加する猫もいます。
この変化を知らずにいると、気付かないうちに体重が増え、肥満につながることがあります。肥満は関節への負担や糖尿病、心臓病などさまざまな健康リスクを高めるため、手術後の食事管理は非常に重要です。
去勢・避妊手術後の体調変化と注意点
行動や体型の変化だけでなく、体調面でもいくつか意識しておきたいポイントがあります。
手術直後の体の変化
手術後しばらくは、麻酔の影響で眠そうにしたり、ふらついたりすることがあります。これは多くの場合一時的なもので、数時間から半日ほどで落ち着いてきます。食欲がすぐに戻らないこともありますが、無理に食べさせる必要はありません。
ただし、翌日以降も元気が戻らない、傷口を過度に気にして舐め続ける、出血や腫れが見られるといった場合には、早めに動物病院へ相談することが大切です。
ホルモン変化による長期的な影響
去勢・避妊手術によって性ホルモンの分泌が抑えられることで、生殖器系の病気のリスクが大きく下がります。一方で、ホルモンが関与していた体のバランスが変わるため、太りやすさや筋肉量の低下といった変化が長期的に現れることがあります。
このような変化は病気ではありませんが、生活環境や食事内容を見直さずにいると、将来的な健康トラブルにつながる可能性があります。
去勢・避妊手術後に飼い主が気を付けるべきこと
去勢・避妊手術後の猫が健康に過ごすためには、飼い主の関わり方が重要になります。
食事管理の見直し
手術後は、猫の体の変化に合わせて食事内容や量を調整することが大切です。これまでと同じフード・同じ量を続けるのではなく、体重や体型を定期的に確認しながら調整していきましょう。去勢・避妊後向けのフードを検討するのも一つの方法ですが、切り替える際は急激な変更を避け、少しずつ慣らしていくことが重要です。
運動と遊びの工夫
活動量が減りやすい手術後だからこそ、意識的に遊びの時間を作ることが大切です。猫じゃらしや知育要素のあるおもちゃを使い、短時間でも集中して体を動かせる遊びを取り入れることで、運動不足の予防につながります。遊びは運動だけでなく、ストレス発散や飼い主とのコミュニケーションにも役立ちます。
体調や行動の変化を見逃さない
去勢・避妊手術後の変化は、数週間から数か月かけて徐々に現れることが多いです。そのため、「手術が終わったから安心」と考えず、日々の様子を観察することが大切です。食欲、排泄、体重、性格の変化などを把握しておくことで、異変に早く気付くことができます。
去勢・避妊手術後の変化を正しく理解することが大切
猫の去勢・避妊手術後には、行動や性格、体調、体型などさまざまな変化が起こります。これらの多くは自然な変化であり、決して「悪いこと」ではありません。大切なのは、その変化を正しく理解し、猫の体と心に合った生活環境を整えてあげることです。
去勢・避妊手術はゴールではなく、猫の新しい生活のスタートでもあります。手術後の変化に寄り添いながら、猫が安心して長く健康に暮らせるよう、日々のケアを続けていきましょう。



