猫が撫でられるのを嫌がるのはなぜ?触られたくない理由と信頼関係の築き方

猫が撫でられるのを嫌がるのはなぜ?触られたくない理由と信頼関係の築き方 猫について
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猫を飼っていると、一緒に過ごすなかで思わず撫でたくなる瞬間がたくさん訪れます。しかし、中には撫でようと手を伸ばしただけで嫌がったり、逃げたり、時には攻撃的な反応を見せる猫もいます。このような行動に戸惑い、どう接すればよいのか悩んでいる飼い主も多いのではないでしょうか。

この記事では、猫が撫でられるのを嫌がる理由と、慣れさせるべきか見守るべきかの判断基準、飼い主としてできる接し方について解説していきます。

「撫でさせてくれない=愛情がない」ではありません

愛猫が撫でさせてくれなくて「信頼してくれないのかな」「嫌いなの…?」と不安になりますが、「撫でさせてくれない=愛情がない」ではありません。飼い主であっても撫でられるのを嫌がる猫は珍しくなく、むしろ

  • 近くで安心して寝ている
  • 見つめてまばたきを返す
  • ゆっくりしっぽを振る

など、猫は“非接触の愛情表現”が得意です。

もし愛猫が上記のような愛情表現をしているのであれば、撫でさせてくれなくても飼い主さんへの愛情や信頼関係は大いにあると言えます。

大切なのは、「猫の意思とペースを尊重すること」です。人間の「撫でたい」という気持ちよりも、猫の「触れてもいい」という気持ちを最優先に考えることが信頼関係を築く鍵になります。

猫が撫でられるのを嫌がるのはなぜ?

猫は犬と比べて抱っこや撫でられるといったスキンシップを好まない、消極的とされることが多々あります。とくに保護猫や元野良猫はさらに高い割合でスキンシップを苦手とする傾向があります。

猫は本来、身体を触られるのが好きな動物ではない

猫は野生時代の名残で「体を触られる=捕まる・危険」と本能的に感じる傾向があるため、犬と比べて人との濃密なスキンシップを必須としません。つまり、撫でられるのが平気な猫は「たまたま」そういう気質を持っている個体であり、嫌がる猫のほうが自然とも言えます。

猫は“撫でられたい時だけ撫でられたい”動物

甘えたい時は自分から近づいてくるが、そうでないときは触られるのを嫌がったり、撫で始めたときは気持ちよさそうだったのに急に噛まれた!という経験をした飼い主も多いでしょう。

人間にとって「撫でる」という行為は愛情を示す最も自然な方法の一つですが、猫にとってそれが必ずしも心地よいとは限りません。とくに自立心が強い猫は自分のペースやタイミングでの関わりを重視する傾向があるため、飼い主にとってはスキンシップのつもりでも、猫からすると突然の接触に驚いたり、不快に感じたりすることがあります。

まずは、「撫でたい」という人間側の気持ちが、猫にとっては必ずしも喜びではないことを理解することが、信頼関係の第一歩となります。

“触られたくない場所”が多い

猫の身体の中には、撫でられることを好まない、あるいは嫌悪感を示しやすい部位がいくつか存在します。例えばしっぽやお腹、足先、耳まわりは猫にとって非常にデリケートな部位です。これらの部分を無理に触ろうとすると、警戒心を強め、最悪の場合は噛んだり引っかいたりなどの攻撃的な反応を引き起こすこともあります。

とくにお腹は内臓が集中している急所でもあるため、野生本能的に「守らなければならない部位」として認識されています。仰向けになってお腹を見せていても、それは「撫でていいよ」のサインではなく、「信頼しているけど触ってほしいわけではない」という状態のこともあります。不用意に手を出してしまうと、猫に不信感を与えてしまいかねません。

過去に嫌な思いをした

子猫時代に人との接触経験が乏しかった場合、撫でられるという行為に慣れておらず、怖がってしまうことがあります。また、過去に撫でられた際に強く押さえつけられた経験や、爪切り・注射などの嫌な記憶と結びついている場合、人の手を「不快なもの」「嫌なことをされる道具」として記憶しているケースも見られます。

さらに、多頭飼育の中で社会性を身につけられなかった猫や、保護猫として過酷な環境を経験してきた猫は、人との信頼関係構築に時間がかかります。こうした背景を持つ猫は、「安心して身体を預ける」という状態になるまで、相当な時間と配慮が必要になります。

体調不良の可能性

これまで撫でられるのが平気だった猫が急に嫌がるようになった場合は、健康状態の変化が原因になっていることもあります。例えば関節の痛みや内臓の不調、皮膚トラブルなどがあると、触られること自体が痛みや不快感につながってしまいます。

また、加齢によって神経が過敏になり、以前よりも撫でられるのが苦手になるケースもあります。普段とは違う様子が見られたときは無理にスキンシップを続けず、一度獣医師に相談してみると安心です。猫の身体は非常に繊細で、ほんのわずかな異変が大きな行動変化となって現れることがあるため、日頃からの観察が重要です。

このサインが出たら「もう撫でないで」の合図

猫が撫でられるのを嫌がっているときには、いくつかの分かりやすい拒否サインを出しています。これらのサインを見逃さず、「今はやめておこう」と引くことが信頼関係を深めるコツです。

しっぽをパタパタと強く振る
➡リズムよく優しく振っている場合はリラックスしているが、大きくブンブン振る・打ちつけるように振るときは「イライラ」「やめてほしい」のサイン。

耳が後ろに倒れる(イカ耳)
➡リラックスしていた耳が後ろや横に倒れたら警戒・不快・緊張のサイン。撫で続けると、噛んだり逃げたりすることも。

体が硬くなる・筋肉がこわばる
➡撫でられて気持ちいいときの猫は体がとろけるように緩むが、撫でているのに筋肉が緊張しているときは「嫌だけど我慢している」状態。

目を見開く・瞬きをしなくなる
➡心地よいときは、瞼がトロンと半開きになるが、まん丸の目でこちらを見つめているときは緊張・警戒・状態の可能性。

しっぽや背中、皮膚がピクっと動く
➡撫でている途中で皮膚がピクッと動いたり、尻尾の先が細かく震えるときは「もう限界」の合図。そのまま撫で続けると猫パンチや噛みつきが飛んでくることも。

逃げようとする・場所を変える
➡明確に距離をとろうとしている行動。「今は構ってほしくない」という意思表示なので無理に追いかけるのはNG。

とくに注意すべきなのは、しっぽをバタバタ振る・耳を後ろに倒す・体が硬くなる・皮膚がピクッと動く・目が見開く、といった反応です。これは「もうやめて」「もう限界」という猫の静かな警告です。撫で続ければ攻撃的な行動につながる可能性もあるため、猫のサインを見逃さず、すぐに手を止めましょう。

「慣れさせるべき?」それとも「そっと見守るべき?」

すべての猫が撫でられることを望んでいるわけではないため、猫の性格・過去の経験・身体の状態・反応を観察して見極め、慣れさせるべきか、そっと見守るべきかを判断することが大切です。

下記のような具体的な判断基準を参考にすると、猫にとって最適な距離感を選びやすくなります。

「慣れてもらってもよい」猫の特徴

  • 自分から寄ってくることがある
  • 撫で始めは気持ちよさそうで、途中で飽きるだけ
  • 反応が「嫌がる」というより「距離感に敏感」なだけ

この場合は、時間をかけて信頼を育てることで、少しずつ撫でられることに慣れる可能性があります。接し方については次の項で解説します。

「無理に慣れさせない方がよい」猫の特徴

  • 自分から近づいてこない
  • 元野良猫・保護猫
  • 撫でようとすると体に”拒否サイン”が出る
  • 高齢、持病持ち、関節や皮膚の異常がある猫

元野良猫や保護猫、警戒心の強い性格の猫は、触られること自体が強いストレスになります。また、体に不調がある猫や高齢猫は、どんなに大切に育てられていても触れられることに抵抗を感じてしまうことがあります。

こうした猫に対して「撫でられるようにさせる」ことを目的に接してしまうと、猫の自尊心や安心感を傷つけることにもつながりかねません。むしろ、“触らない愛情”を選ぶことが、猫にとって最大のやさしさになる場合もあります。

撫でられるのが苦手な猫への接し方の手順

撫でられるのが苦手な猫と接する際は、「慣れさせる」ことを目的にせず、猫が“自分の意思で心を開ける環境”を整えることが大切です。

下記に、信頼関係を築くための自然なステップ(手順)を紹介します。

STEP1:まずは「距離」を尊重する

猫が自分から距離を取っているようであれば、無理に近づいたり手を伸ばしたりせず、まずは「そばにいるだけで安心できる存在」になることを目指しましょう。そのためには、猫の見える場所で静かに過ごし、話しかける際も高い声や大きな音を避け、やさしく落ち着いた声で接することが大切です。

また、猫が興味を持って近づいてきたとしても、すぐに手を出すのではなく、猫自身のペースに任せることが信頼を築くうえで重要なポイントです。

猫に「この人は何もしない、安全な存在だ」と思ってもらえるような距離感を保つことが、関係づくりの第一歩となります。

STEP2:信頼のサインを観察する

猫との距離が少しずつ縮まり、猫が警戒心を緩めはじめると、行動や表情にその兆しが表れてきます。例えばこちらを見ながらゆっくりとまばたきを返してくれたり、お尻を向けて座ったり、飼い主のそばでリラックスした姿勢をとってくつろぐようになることがあります。こうした仕草は、猫があなたを信頼しはじめているサインです。

しかし、この段階でも焦って撫でようとはせず、あくまで猫の変化を観察しながら、猫自身が次のステップに進みたがっているかどうかを見極めることが大切です。猫の方から「もっと近づいても大丈夫」と感じてもらうためには、過剰なアプローチを控え、落ち着いた存在でいることが求められます。

STEP3:猫が近づいてきたら“手の匂い”を確認させる

猫が自分から近づいてくるのは信頼の表れですが、だからといっていきなり触れるのはまだ早いかもしれません。まずは猫にこちらの手の匂いを嗅がせることから始めましょう。猫の顔の正面からではなく、やや下の位置からゆっくりと手を差し出し、猫がどのように反応するかを見ます。猫がその手に興味を持ち、匂いを嗅いだり、スリスリとすり寄ってくるようであれば、触れられることに対してある程度の安心感を持っている可能性があります。

一方で、顔を背けたり、その場から離れようとする場合は、「まだ触れられるのは早い」と伝えているサインです。その反応を尊重し、無理に接触を進めないことで、猫との信頼関係は少しずつ強まっていきます。

STEP4:撫でるのは“ほんの一瞬”から始める

猫が匂いを確認し、リラックスした様子を見せてくれたら、いよいよ撫でるという行為に進むタイミングです。ただし、ここでも大切なのは“短く・軽く・やさしく”です。

まずは背中や頭など、猫が比較的触られることに抵抗の少ない部位を、ほんの数秒だけ撫でてみましょう。その後、すぐに手を止めて猫の反応を観察します。もしも猫がその場に留まり、さらに体を預けてくるような仕草を見せた場合は、「もう少し撫でてもいいよ」というサインです。

逆に、体がこわばったり、しっぽを振る、耳を伏せるといった不快のサインが見られたら、それ以上続けるのはやめましょう。撫でることに慣れてもらうには、猫の「もういいよ」という合図を見逃さないことが何より大切です。

STEP5:日々の積み重ねで“触れ合える時間”を伸ばしていく

撫でられることへの抵抗が少しずつ減ってきても、猫の気分や体調によって反応は変わります。昨日は甘えてきたのに今日は触られるのを嫌がる、というのは猫にとって自然なことです。その都度気分を読み取りながら、無理に接触を強要せず、猫のペースに合わせて過ごすことが、結果的に“触れ合える時間”を伸ばすことにつながります。

また、撫でたあとに猫の好きなおやつをあげるなど、スキンシップとポジティブな体験を結びつける工夫も有効です。こうした小さな積み重ねのなかで、猫の中に「撫でられる=安心できる・うれしいこと」という認識が育っていきます。

最終的に目指すべきは、ただ撫でられる猫になることではなく、「触れ合いを受け入れてくれる信頼関係を築くこと」です。猫が心を許し、自ら寄り添ってくれるようになるその瞬間こそが、あなたとの絆が深まった証と言えるでしょう。

まとめ:猫が心を開いてくれる瞬間を見逃さない

猫は決して人嫌いな動物ではありません。ただ、自分が納得できる形での関わり方を大切にしているだけです。触られたくない、撫でられるのは苦手。それは、猫が自分の気持ちをきちんと伝えている証拠でもあります。

だからこそ、飼い主側がその気持ちを尊重し、応える姿勢を持ち続けることで、少しずつ心の距離は縮まっていきます。撫でられること自体を目的にするのではなく、猫と一緒に過ごす日々の中で信頼というかけがえのない絆を築いていくことが、何よりの喜びになるはずです。

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