犬と一緒に旅行に出かける機会が増えつつある今、愛犬とのお出かけを楽しむためには、飼い主としてのマナーや準備が欠かせません。ただの「ペット同伴」ではなく、「社会の一員としての犬連れ旅行」であることを意識することが、犬にも人にも快適な旅を実現する第一歩です。
犬との旅行はなぜマナーが大切なのか?
犬と一緒の旅行は飼い主にとっては特別な時間ですが、他の旅行者や宿泊施設、交通機関の利用者にとっては、そうとは限りません。犬が苦手な人、アレルギーを持つ人、小さな子ども、高齢者など、さまざまな人と空間を共有するからこそマナーを守ることが求められます。
公共の場でのトラブルやクレームを防ぐためだけでなく、今後も犬連れ旅行を受け入れてもらう環境を守るという意味でも、私たち飼い主の行動は大きな影響を与えるのです。
出発前にやるべきこと
健康チェックと動物病院での相談
旅行に出かける前に、まず愛犬の健康状態を確認しましょう。持病がある場合や高齢の犬、子犬などは、旅のストレスが体調に影響することもあります。かかりつけの動物病院で事前に相談し、必要があれば健康証明書や常備薬を用意しておくと安心です。
また、混合ワクチンや狂犬病予防注射が済んでいるかも確認しておきましょう。宿泊先によっては証明書の提示を求められる場合があります。
しつけの見直し
「待て」「おいで」「伏せ」などの基本的なコマンドがきちんと通るかどうかを再確認しておきましょう。とくに宿やカフェ、観光地では「吠えない」「飛びつかない」「粗相をしない」といったしつけが旅の質を左右します。
出発前に、普段の生活の中で軽く練習しておくことも効果的です。
持ち物チェック
旅行中に必要となるものは意外と多く、忘れ物があると現地で困ることになります。愛犬のフードやおやつ、食器、水、リード、トイレ用品(シート・袋)、お気に入りのおもちゃやベッド、タオルなどを忘れず準備しましょう。
また、迷子対策として、迷子札やマイクロチップの装着も重要です。GPS付きのタグを利用する飼い主も増えてきています。
宿泊施設でのマナーと注意点
鳴き声や無駄吠えへの配慮
犬にとって慣れない環境で一晩過ごすのは大きなストレスです。部屋に入ってすぐは落ち着かず、吠えてしまうこともあります。そんなときは怒らず、飼い主がそばにいて安心させてあげましょう。
音漏れしにくい部屋を選ぶ、寝具やクレートで安心感を与えるなど、周囲への音への配慮も忘れてはいけません。
トイレのしつけと失敗時の対応
屋内では、必ず決められた場所でトイレを済ませるように誘導しましょう。万が一粗相をしてしまった場合は、すぐに掃除し、宿のスタッフにも報告して誠意を持って対応しましょう。
旅行中は環境の変化でトイレの失敗が起こりやすいため、シートや消臭剤を多めに持参するのがおすすめです。
ベッドや家具の利用ルールを守る
ペットOKの宿泊施設でも、ベッドやソファの上に犬を乗せることを禁止している場合があります。規約は施設ごとに異なるため、事前によく確認し、決まりには必ず従いましょう。
万一汚してしまった場合も、黙って帰らず、正直に報告しクリーニング代などに応じる姿勢が求められます。
移動中に気をつけたいマナー
車移動では安全確保を最優先に
犬を車に乗せる際には、シートベルトに対応したハーネスやクレートを使用して、安全を確保することが基本です。窓から顔を出させたり、自由に動き回らせたりするのは事故の原因になります。
また、長距離移動では適度な休憩と水分補給が必要です。車内の温度管理にも十分注意し、熱中症対策を怠らないようにしましょう。
公共交通機関ではルールを守る
飛行機や電車、バスでの移動を予定している場合は、各社のペット利用規定を事前に確認することが大切です。多くの公共交通機関では、決められたサイズのキャリーケースに入れること、吠えないことなどの条件があります。
また、移動中に排泄しないように、乗車前にトイレを済ませておく、トイレシートを敷くなどの対策も有効です。
観光地や飲食店でのふるまい
人混みの中ではリードを短く持つ
観光地や道の駅などでは多くの人が行き交うため、リードを長くして歩かせるのは危険です。とくに小型犬は踏まれたり、思わぬ方向に飛び出したりすることもあるため、必ず短めに持ち、飼い主の横を歩かせるようにしましょう。
すれ違う人や他の犬にも気を配り、不安そうな様子があれば立ち止まる、進路を変えるなど柔軟な対応を心がけましょう。
飲食店では静かに過ごせる工夫を
犬同伴OKのカフェやレストランでも、「犬連れ=騒いでもいい」わけではありません。椅子の上に乗せない、吠えさせない、周囲のお客さんに配慮するなどの基本マナーを忘れずに。
床にクレートを置いて中で待たせる、ガムやおもちゃで気を紛らわせるなど、落ち着いて待てるような工夫があると安心です。
「犬連れ旅行」が広がる中で私たちにできること
ペットと暮らす人が増え、ペットとの旅行を受け入れてくれる施設も年々多くなってきています。その背景には、多くの飼い主がマナーを守り、犬との暮らしを社会にうまく溶け込ませようとしている努力があります。
「うちの子は大丈夫」「このくらいなら平気」といった油断が、他人に不快感を与えてしまうこともあるということを常に忘れず、責任ある飼い主としてふるまうことが、旅行の質を高め、次回の旅も心から楽しめる鍵となるでしょう。