猫は本来、柔らかい場所で身体を丸めて眠ることを好みますが、ときどき背筋を伸ばしたような姿勢のまま座って眠ってしまうことがあります。普段と違う寝姿に戸惑う飼い主も多く、健康に問題があるのではないかと不安になるケースも少なくありません。
この記事では、猫が座ったまま眠る理由を行動学・健康・環境の視点から整理し、飼い主がとるべき行動や注意点をわかりやすく解説します。
猫が座ったまま寝る理由とは
体勢を保ったままリラックスしている場合
猫は浅い眠りを短く繰り返す動物で、完全に身体を横たえなくても休息を取ることができます。とくに周囲の環境が安心できるときや、飼い主が近くにいるときは、座位のまま体を緩めて目を閉じることがあります。この姿勢は緊張しているように見えることがありますが、実際には体の力が抜けていることも多く、穏やかな表情をしている場合は「軽く休んでいる状態」と考えてよいでしょう。
周囲の音や動きに注意を払いたいとき
猫は本能的に環境への警戒心を持ち続ける動物です。横になってしまうとすぐに動けなくなるため、完全には気を抜けないときには座った姿勢を維持したまま浅く眠ることがあります。とくに新しい環境に移ったばかりの猫や、多頭飼育でほかの猫との力関係が安定していない場合は、この姿勢で眠る時間が長くなることがあります。
呼吸が楽になる姿勢をとっている可能性
呼吸器の不調や鼻づまりがあると、猫は横になった状態よりも胸を拡げやすい姿勢を選びます。このとき、座ったまま胸を張る姿勢が最も呼吸しやすく、結果としてそのまま眠ってしまうことがあります。季節性のアレルギーや風邪のほか、慢性鼻炎、心臓疾患、肥満による圧迫などが影響することもあり、普段より呼吸が荒い、鼻が鳴るといった変化が同時に見られる場合は健康サインとして注意が必要です。
関節に違和感があるときの補正姿勢
老齢の猫や、関節に痛みを抱える猫は、体を丸めて寝ることがかえって負担になる場合があります。そのため、関節に圧がかかりにくい座位を選び、そのまま眠ることがあります。特に高齢猫では骨関節症が潜んでいることが少なくなく、段差の上り下りを避けるようになったり、毛づくろいの範囲が狭くなったりといった行動変化が同時に見られる場合は、動物病院でのチェックが推奨されます。
座ったまま眠る猫に飼い主ができること
まずは猫の様子を静かに観察する
座ったまま眠る姿を見たとき、すぐに触ったり体勢を変えようとしたりすると、猫が驚く場合があります。とくに浅い眠りでは、猫はすぐに反応しやすいため、まずはしばらく観察し、呼吸のリズムや姿勢に違和感がないかを確認することが大切です。リラックスしているように見えれば、そのまま安心して休ませて問題ありません。
環境的なストレスがないかを見直す
外の物音が大きい、来客が続いている、引っ越し直後であるなど、環境要因で猫の警戒心が高まっているときは、座位で眠る割合が増えることがあります。猫が隠れられるスペースを確保し、視線を遮れる場所を増やすだけでも、横になって休む行動が戻りやすくなります。静かな空間、適切な温度、心地よい寝床を用意することは、猫の睡眠の質を高める重要な要素です。
呼吸や足腰の状態に変化がないかをチェックする
座ったまま眠る姿勢が頻繁に続くときは、体調が関係していないかを確認する必要があります。呼吸が早い、肩や胸が大きく上下する、横になることを避ける、足をかばう様子があるなどの変化が見られる場合は、早めに動物病院で相談するのが安心です。とくに高齢猫では小さな変化が健康問題のサインである可能性があるため、日常の行動との差を把握しておくことが大切です。
猫が座ったまま寝るときの注意点
長時間続く場合は健康チェックを検討する
座位で眠ること自体は珍しい行動ではありませんが、数日続く、あるいは頻度が急に増える場合は、何らかの不調が潜んでいる可能性があります。呼吸のしづらさや関節の痛みは猫が自ら訴えることができないため、行動の変化として現れます。寝姿が変わったと感じたら、同時に食欲や排泄リズム、歩き方も確認し、少しでも違和感があれば受診を検討する必要があります。
眠っている最中に無理に姿勢を変えない
猫が座ったまま眠っていると姿勢が不安定に見え、倒れそうで心配になるかもしれません。ただ、無理に寝かせようとするとかえってストレスになり、猫の安心感を損なうことがあります。猫自身が体勢を調整することが多いため、安心できるようそっと見守り、必要があれば柔らかい寝床や毛布を近くに置いて選択肢を増やす程度にとどめるとよいでしょう。
老猫の場合は生活環境をより快適に整える
老猫は関節に負担がかかりやすく、寝姿勢にも制限が出ることがあります。この場合、段差を減らす、トイレの縁を低くする、暖かい寝床を複数設置するなど、生活全体の快適性を高める工夫が必要です。また、老猫は睡眠時間が長くなるため、静かに休めるスペースを複数持てるように工夫すると、座位で眠る姿勢が改善されることがあります。
まとめ:座ったまま寝るのは“異常”とは限らないが、サインを見逃さないことが重要
猫が座ったまま眠る姿は一見不自然に見えることがありますが、必ずしも病気を示すわけではありません。軽くリラックスしているだけのこともあれば、環境に対する警戒心から横になることを避けている場合もあります。ただし、呼吸のしにくさや関節の違和感といった身体の不調が隠れているケースもあり、睡眠姿勢の変化が続くときには注意が必要です。大切なのは、猫の普段の様子との違いに気づき、健康サインをしっかり見極めることです。飼い主が日常の行動変化を丁寧に観察することで、猫がより安心して眠れる環境づくりにつながります。



