老犬が夜中に家の中を歩き回る姿を見て、不安や心配を感じる飼い主は少なくありません。深夜の徘徊は単なる習慣的な行動ではなく、加齢に伴う身体的・認知的変化が背景にある場合も多いです。
この記事では、原因や対策、放置して良いのかどうか、そして徘徊を止めることができるのかについて詳しく解説します。
老犬が深夜に徘徊する原因とは
認知機能不全症候群(犬の認知症)
最も代表的な原因は、老犬特有の認知機能不全症候群(いわゆる犬の認知症)です。時間や空間の感覚が乱れ、昼夜の区別がつきにくくなり、真夜中に落ち着きなく歩き回ることがあります。さらに、方向感覚を失いやすいため、家具にぶつかる、同じ場所をぐるぐる回るなどの行動が見られるのも特徴です。
痛みや身体的不快感
関節炎や内臓疾患による痛み、または夜間の頻尿・便意なども徘徊の原因となります。特にシニア期には腎臓病や心臓病などの慢性疾患が増えるため、夜間に落ち着かない様子を見せる場合は身体的な要因を疑うことも重要です。
不安やストレス
加齢による感覚器官の衰え(聴力や視力の低下)が原因で、不安を感じて歩き回ることもあります。夜間の静けさがかえって不安を煽り、飼い主を探すために徘徊してしまうケースもあります。
老犬の徘徊は見過ごしていい?
深夜の徘徊は単なる老化現象に見えるかもしれませんが、放置してよいものではありません。徘徊には「認知症の進行」「病気のサイン」「生活環境からくるストレス」などが隠れている可能性が高いからです。放置すると症状が悪化し、転倒やケガのリスクも高まります。また、飼い主自身の睡眠不足やストレスにつながり、共倒れの状態に陥ることもあります。そのため、原因を探り、できる限りのケアや対策を講じることが求められます。
老犬の徘徊を止めることはできる?
現実的には、徘徊を完全に止めることは難しい場合が多いです。特に認知症が進んでいる場合、徘徊自体は症状の一つであり、行動そのものをなくすことはできません。ただし、「徘徊を減らす」「安全に徘徊できる環境を整える」ことは可能です。たとえば、サプリメントで脳の健康をサポートしたり、安心できる寝床を整えたりすることで、頻度や不安の度合いを軽減できる場合があります。つまり、完全な制御ではなく「共存」と「安全確保」が現実的な目標となります。
老犬の深夜徘徊への具体的な対策
獣医師による診断と治療
まず大切なのは動物病院での診察です。認知症や関節炎、内臓疾患など原因が特定できれば、それに応じた薬やサプリメント、治療方針が提案されます。特に認知機能の低下には進行を遅らせる薬やフードが存在するため、早期に相談することが有効です。
安心できる環境づくり
家具の配置をシンプルにし、ぶつかりにくい動線を確保すると、徘徊中の事故防止につながります。また、夜間も薄暗い照明を点けておくことで、視力の低下した犬でも安心して歩ける環境を作れます。柔らかいマットを敷くことで転倒によるケガを防ぐ工夫も効果的です。
適度な運動と日中の活動量調整
日中に散歩や軽い遊びを取り入れて適度に疲れさせることで、夜間にぐっすり眠れるようになります。昼夜逆転を防ぐ意味でも、朝や昼間に光を浴びることは体内リズムの安定に役立ちます。
飼い主の声かけとスキンシップ
老犬は不安を感じやすくなるため、飼い主の声かけや軽いスキンシップが安心材料となります。ただし、徘徊の最中に無理に止めようとするとかえって混乱することがあるため、見守りながら安心させる姿勢が大切です。
まとめ
老犬の深夜徘徊は加齢に伴う認知症や体の不調、不安など複合的な要因で起こります。見過ごしてしまうと症状の悪化や事故のリスクを招くため、原因を特定し、環境調整や生活習慣の工夫、獣医師のサポートを受けることが大切です。徘徊を完全に止めることは難しいものの、飼い主の配慮と工夫によって「安全で穏やかな徘徊」に変えることは可能です。老犬の行動を理解し、寄り添いながら共に過ごすことが、飼い主と犬双方の安心につながります。