共働き家庭の増加や旅行、出張といった事情から、犬を一時的に預ける「ペットシッター」の需要は年々高まっています。愛犬を住み慣れた自宅で世話してもらえるため、ペットホテルよりもストレスが少ないという点でも人気を集めています。しかし、そんな便利なサービスであっても、利用の裏にはトラブルやクレームの声も少なくありません。信頼して任せたはずのペットシッターが原因で、飼い主と犬の双方に深刻な影響が及ぶケースもあるのです。
この記事では、犬のペットシッターにまつわるよくあるトラブル、悪質な業者の特徴、契約前に確認すべきポイント、そしてトラブルが起きた際の具体的な対処法について詳しく解説します。
犬のペットシッター利用で起こりがちなトラブル
訪問回数や時間が守られないケース
もっともよくあるのが、事前に依頼した内容と実際のサービス内容に食い違いがあったというトラブルです。たとえば「1日2回、30分ずつの散歩」をお願いしたはずが、実際には1回10分程度の訪問しかされていなかったという例が後を絶ちません。部屋の監視カメラで発覚したり、犬の様子がおかしくなって初めて判明するケースもあります。
犬の世話が不十分・雑だった
ドッグフードや水がきちんと与えられていなかった、散歩に連れて行っていない、排泄物の処理がされていないなど、基本的なケアがいい加減だったという報告も多く寄せられています。こうした不適切な世話は犬の健康を害するだけでなく、ストレスや行動異常の原因になることもあります。
無断で自宅に他人を入れる・私物を触る
ペットシッターが家族以外の知人やパートナーを勝手に連れ込んでいた、冷蔵庫を開けたり私物を触っていたといった、モラルの欠如した行動が原因で信頼が崩れることもあります。留守中の自宅を預ける以上、プライバシーの管理は極めて重要な課題です。
犬への暴言や乱暴な扱い
悲しいことに、犬に対して怒鳴ったり無理やり引っ張るといった粗暴な扱いをされたというケースもあります。散歩中にリードを乱雑に扱われた、吠えたことを叱責された、体罰のような行為を受けていたなど、犬の精神的ダメージにつながる深刻な問題です。
悪質なペットシッターを見抜くためのポイント
曖昧な契約・料金説明しかできない
信頼できるシッターであれば、訪問回数・所要時間・サービス内容・緊急時の対応などを明文化し、きちんと契約書を交わします。逆に「口頭で大丈夫です」「細かいことは当日決めましょう」といった曖昧な説明しかしない相手は要注意です。
資格や登録の有無をはぐらかす
動物取扱業の登録やペットシッター士の資格を持っているかどうかは、信頼性の指標となります。保険(損害賠償保険など)への加入状況も重要です。こうした点を聞かれて不快感を示したり、曖昧にごまかすような人物は選ばない方が無難です。
面談時に犬への関心が薄い
シッターとの初回面談では、犬の性格や普段の生活リズム、食事、散歩の癖などを細かくヒアリングされるのが一般的です。しかし、こちらが話してもリアクションが薄い、犬に興味を示さない、扱い方が雑といった様子が見られる場合、その人に愛犬を任せることは非常に危険です。
犬のペットシッターを利用する際の準備と注意点
愛犬の情報を詳細に共有する
年齢や性格、好みのドッグフード、苦手なもの、散歩のスタイル、過去の病歴などを細かく伝えておくことが必要です。とくに、持病や投薬中の場合は、かかりつけの動物病院名と連絡先もセットで伝えておくべきです。
事前に「お試し訪問」を依頼する
いきなり本番ではなく、まずは短時間だけのお試し訪問をお願いし、犬の反応や相手の対応を観察しましょう。散歩中のリードの扱いや、犬への声かけ、目線の高さなど、細部から人柄が見えることがあります。
防犯カメラやペットカメラの設置を検討
万が一に備えて、自宅内にカメラを設置し、愛犬や室内の様子を遠隔で確認できる体制を整えておくと安心です。事前にシッターにカメラの存在を伝えておくことで、抑止効果も期待できます。
トラブルが起きてしまったときの対処法
状況を記録し、証拠を残す
散歩されていなかった、ドッグフードが減っていない、怪我をしていたなど、異変があった際は、すぐに写真や動画を撮影し、日付や時間とともに記録を残します。口頭だけでは説得力に欠けるため、証拠は必須です。
冷静に事実確認を行う
感情的になるのではなく、まずは相手に連絡を取り、事実確認を行いましょう。明確な過失が認められた場合は契約違反として損害賠償を請求することも可能です。損保に加入している業者であれば、補償が適用される場合もあります。
消費者センターや動物関連団体に相談する
解決が難しい、話し合いが進まない場合は、地域の消費生活センターに相談することで、法的なアドバイスや行政的なサポートを得ることができます。動物の福祉を扱う団体も、相談先として選択肢に入るでしょう。
犬の幸せを第一に考えたシッター選びを
ペットシッターは犬にとって飼い主以外で最も長く接する存在となる可能性があります。そのため、単なる「業務委託」としてではなく、「犬の一時的な家族」としての意識で相手を選ぶことが大切です。資格や評判、そして何より愛犬との相性を総合的に見て、「この人なら任せられる」と心から思える相手に出会えるまで、妥協しないことが飼い主の責任です。
どんなに便利なサービスでも、大切な家族を守れるのは最終的には飼い主自身です。正しい情報収集と事前の準備を徹底し、愛犬のために安心・安全なシッターサービスを活用しましょう。